世界的なエネルギー資源への関心が高まる中、二酸化炭素の排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルの取り組みが、持続可能な開発SDGsの観点からも注目されています。我が国でも政府が2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを2020年10月に宣言しました。民間の取り組みが先行する中、名古屋市も後れをとってはいけないと思い、2月市議会本会議では、低炭素社会の実現に向けたテーマで質問をしました。
また、名古屋城天守閣の木造化復原についても、3年間まったく進捗がみられず、史実に忠実な復原というお題目を唱えているだけで、木材の保管などの費用だけがかさんでいます。そこで、名古屋城の木造化復原についても質問いたしましたので、その概要をご紹介します。
〇ミドリムシを活用したバイオディーゼル燃料による低炭素社会の実現について
低炭素社会の実現に向け、世界中で、水素自動車などの研究開発が進められています。我が国でも、排出される二酸化炭素を実質ゼロとする、カーボンニュートラルの取組みが進められています。
名古屋は自動車への依存が高く、他の大都市と比較すると、運輸部門からの一人当たりの二酸化炭素排出量が5割程度高くなっています。そのため、二酸化炭素の排出量削減は、名古屋市にとっては大きな課題となっています。そこで、自動車の燃料として、ガソリンや軽油などの化石燃料ではなく、植物や生物に由来するバイオマス燃料を使用すれば、バイオ燃料は、植物や生物が成長の過程で二酸化炭素を取り込む量と、それらを燃やした際に排出される二酸化炭素の量とが等しくなり、実質的に二酸化炭素を増やさない、カーボンニュートラルとなります。
また、水素と異なり、専用の自動車やスタンドなどがいらないため、バイオ燃料は使いやすい燃料です。現在、バイオ燃料としては、使わなくなった天ぷら油などが主として使われていますが、世界規模でバイオ燃料の争奪戦となる気配があり、既に一部では使わなくなった天ぷら油の値段の高騰も見られるようです。
ちなみに、バイオ燃料の原料は食料に求めることが多いのですが、今後、地球規模での食料危機が発生するとも言われていますので、食料を犠牲にしてまで、燃料を作るのはいかがなものかと言わざるを得ません。ですから、食料以外の原料でバイオ燃料が作り出すことができれば、理想的といえます。既に、微生物である、ミドリムシとよばれる藻の仲間から、燃料を作り、バスやトラックを走らせる取り組みが既に行われています。東京の西武バスでは、ミドリムシの燃料でバスが走っています。名古屋でも、次低炭素社会の実現に向けて、次世代の技術開発に取り組むためにも、ミドリムシ由来のバイオディーゼル燃料の活用について、実証実験をしてみてはどうかと環境局に尋ねました。
環境局からは、地球温暖化対策の実行計画の中で、「次世代バイオ燃料」を実際の車両を使って走らせるなどの試験走行を行うといった回答がありました。
航空業界では、バイオ燃料を使用していない航空機の乗り入れを禁止する国や地域がでてくるのではないかと言われており、JALやANA、プラント会社など16者が共同で、安定的な供給体制の構築に取り組むこととなりました。これが、世界の潮流です。名古屋も乗り遅れないように民間とタイアップをしながら進めて欲しいと思います。
〇名古屋城天守閣木造復元について
名古屋城木造化復原のスケジュールは、これまで3年かけて1ミリも進みませんでした。今後、予定通り進むのか?と尋ねたところ、令和4年度中に全体計画を取りまとめるとの答弁が観光文化交流局からありました。
しかしながら、これまでに、市長は、史実に忠実に復元すると言い張りエレベーターは付けない。その代わり新技術を公募する、ドローンだとか、しょいこで背負ってかつぐだとか、夢物語りのようなことばかり言い続けてきました。
しかし、新技術の公募では、1階までエレベーターを付けるのもありだと言い出しています。天守閣からの景色を全ての人が楽しめるようにすると言っていたのに、実態は全く違います。
また、これまでの有識者の皆さんによる検討の結果、石垣に負荷をかけないように上物を作るために、コンクリートを流すというはねだし工法は、穴蔵石垣を撤去しコンクリートを流し込むことが必要となるため、石垣保全の観点から困難な見込みです。
現在の技術では、石垣を棄損せずに天守を作ろうと思うと、既存のケーソンに鉄鋼の柱を立てる、いわば柱まるけの基礎構造にならざるを得ないこともわかってきました。
市長は史実に忠実にするため、エレベーターは付けない、史実に忠実でなければやらない、復元的整備はやらないと言うようなことを言っていましたが、はねだし工法が使えない以上、柱まるけの構造になるしかないが、復元的整備はやらないと言っていたので、史実に忠実でないことを理由に木造化を断念するのか?と迫りました。
市長は、「同じところに、材料も同じで、図面がある、この3つがあれば、本物なんです。7000tのコンクリートのケーソンをやめるとは言っていない、使いながらやっていく。史実に忠実な復元をめざします」と念仏のように唱え続けるだけで、具体的な方針は語ることはありませんでした。責任は取ると市長は言っておられますが、これでは責任のある態度とは言えません。その上、現在の名古屋市が進めている、木造化復元については、文化庁から再三にわたり言われている課題への対応が欠落しています。
市長に、「何が欠落しているのかわかるか?」と尋ねたところ、「城郭建築の集大成である名古屋城天守の、木造の技術の継承」が課題だとお答えになりました。
そうではないです。戦後復興の象徴である現在の天守の評価、すなわち、現の天守を取り壊すことと、木造で作り直すことの、どちらが価値のあることなのかという評価がなされていない、つまり解体までに必要とされる正当なプロセスが欠落したまま突っ走っているという点に重大な問題があるのです。
スケジュールありきではなく、丁寧なプロセスで、現天守の評価、石垣の保全、バリアフリー、全ての課題を解決できるよう、有識者全員の合意・納得を得た上でしっかりと取り組めば良いだけの話です。課題を取り違えたまま、精神論だけで、お題目のように、やりますと言いつづけているだけでは、いつまでたっても何も解決しないと思います。この問題は市議会において引き続き追及していきたいと考えています。